ジャマイカを象徴する果物。未熟果は食べられません!
「アキー」は真っ赤な果実が自然に裂けると、中から漆黒の種子とクリーム色の果肉が現れます。西アフリカからジャマイカへ渡り、ついには国民的な食材となった、世界でも特にユニークな熱帯果樹です。
西~中央アフリカの熱帯地域を原産とするムクロジ科Blighia属の常緑高木です。自然下ではセネガルからカメルーン、ガボン方面に分布し、季節的に乾燥する低地林やサバンナに接する森林などに生育します。樹高は通常7~25mほどに達し、成長は比較的早く、大きな樹冠を形成します。
属名Blighiaは、キャプテン・ウィリアム・ブライにちなみます。アキーは西アフリカからジャマイカへ持ち込まれ、その後カリブ海地域へ広く普及しました。現在ではジャマイカを象徴する果物の一つとなり、アキーと塩漬けタラを組み合わせた「Ackee and Saltfish」はジャマイカを代表する料理として知られています。
そして何より、本種は果実の姿が非常に面白い植物です。
未熟な果実は閉じていますが、成熟すると果皮が鮮やかな赤~橙赤色に変化し、やがて3つに自然に裂開します。そこから現れるのが、光沢のある大きな黒い種子と、それを取り囲むクリーム色~淡黄色の肉質な仮種皮です。
赤い果皮、漆黒の種子、クリーム色の仮種皮。この強烈な色彩の組み合わせは非常に美しく、樹上で果実が一斉に開いた姿には、食用果樹とは思えないほどの観賞価値があります。
食用になるのは、この種子を取り囲んでいる肉厚な仮種皮です。
アキーは一般的なトロピカルフルーツのように、甘い果肉をデザートとして食べる果物ではありません。十分に成熟した仮種皮は加熱調理して利用され、食感や風味は果物というより食材に近い存在です。ジャマイカでは塩漬けタラ、タマネギ、トマト、香辛料などとともに調理されます。
この「果物なのに料理の主役になる」という性質も、アキーの大きな面白さです。
ただし、アキーについては必ず知っておかなければならない重要な注意点があります。
未熟果は食べてはいけません。
未熟な仮種皮にはhypoglycin A(ヒポグリシンA)という毒性成分が高濃度に含まれ、摂取すると激しい嘔吐や重度の低血糖などを引き起こす「ジャマイカ嘔吐病」の原因になります。重症例では痙攣、昏睡、死亡に至る危険もあります。さらに種子も食用にはできません。
重要なのは「加熱すれば未熟果も食べられる」という植物ではないことです。未熟果を加熱しても安全にはなりません。食用には、樹上で十分に成熟し、果実が自然に大きく裂開して黒い種子と仮種皮が露出したものを使用することが基本です。種子など食用にならない部分を完全に取り除き、適切に下処理・加熱して利用します。
この特殊な性質を理解すると、「果実が開くまで待つ」というアキー独特の収穫方法にも意味があることが分かります。
栽培面では、低地の熱帯~亜熱帯気候に適応します。年間の日中気温が24~27℃程度の地域を特に好みますが、およそ20~34℃の範囲にも対応するとされています。乾燥気味の地域から湿潤地域まで比較的幅広く適応し、標高約900mまで栽培可能とされています。
耐暑性は高く、日本でも夏季には旺盛な成長が期待できます。一方、耐寒性はそれほど高くありません。成熟株でも約-3℃以下では枯死する可能性があり、特に幼木は霜に弱いとされています。日本では暖地を除いて鉢植えを基本とし、冬季は霜や凍結を避けて管理するのがおすすめです。
また、本種は自家結実性がないとされているため、果実の収穫を目的とする場合は異なる個体を複数育て、受粉の機会を確保することも重要です。花には芳香があり、ミツバチなどによって受粉されます。
西アフリカに生まれ、海を越えてジャマイカへ渡り、その土地の食文化を象徴する存在にまでなったアキー。
鮮烈な赤い果実が自然に開き、黒い種子とクリーム色の仮種皮が現れる奇抜な姿。そして「完熟して自然に開くまで食べてはいけない」という、他の果物にはなかなか見られない性質。
正しい知識なしに食べることは絶対におすすめできませんが、その性質まで理解して栽培するなら、植物としても食文化としても非常に奥深い熱帯果樹です。世界の果物がどれほど多様なのかを体感させてくれる、まさに異文化まで含めて楽しむことのできる一種です。